「サロモン様ー! サロモン様ー」
アニエスに呼ばれる。
……大きな声を出すな
……廊下を走るんじゃない
心の中の葛藤がますます大きくなる……
「なんだ?」
「どうされたの? お顔が怖いですよ?」
「いや、なんでも、ない」
「そうですか? 来週のパーティーはサロモン様が私と一緒に行ってくださるんですよね?」
「はっ? なぜ?」
「えっ? だって婚約を破棄されたんでしょ? 私のために……ドレスも用意して下さったし」
……そうだった、いつもの通り彼女と行くつもりでいてしまった……
「そうだな、迎えに行くよドレスは完成したのか?」
「はいっ! 私がデザインしたんですよ!」
「そうか、それは楽しみだな……」
茶色の瞳がワクワクとしていてまるで、小さな犬のような可愛さだ、同じ色のふわふわとした髪も犬っぽい。