さっきからずっと遼生さんが話題を振ってくれているけれど続かない。

 昔は常に話題が尽きなくて、話したいことがたくさんあって時間が足りないくらいだったのに。

「萌ちゃんはどんな音楽を聞くの?」

「あ、えっと……」

 好きなバンド名を上げると、遼生さんはワントーン高い声で「俺も好きなんだ」と言う。

 それからも好きな食べ物や休日の過ごし方などを聞かれ、すべてが昔と変わっていなかった。

 私がそのバンドを好きになったきっかけは、遼生さんがファンだったからだ。好きな食べ物に関しては、優しい遼生さんが食事の際は、私の好みに合わせてくれていて、そうしているうちに遼生さんも同じものが好きになった。

 映画もそう。私が翻訳の仕事を目指しているため、必ず字幕で見ていた。私と出会うまでは吹き替えばかり見ていたのに、遼生さんもいつの間にか字幕で見るのが当たり前になっていったんだ。

「すごいな、俺と萌ちゃん。ここまで息が合うって珍しくないか? とくに映画は吹き替えで見る人が多いだろ? だから友達と一緒に映画には行けなくて、いつもひとりで見ていたんだ」