「そうだね」

 そう答えながら複雑な気持ちになる。それというのも、遼生さんは昔から必ず車で出かける時は、さっきのようにドアの開け閉めをしてくれた。

 それは恋人である私にだけしてくれる特別なものだと自惚れていたけれど、違ったのだろうか。そう思うと落ち込む自分がいる。

「よし、じゃあ出発しようか。あ、そうだ凛ちゃんが好きかなって思ってDVDを借りてきたんだけど見る?」

「見るー!」

 遼生さんが用意してくれたのは、凛が好きなアニメだった。

「よく凛が好きだってわかりましたね」

 びっくりして尋ねると、遼生さんは凛が履いている靴を指差した。

「あれを見て気づいたんだ」

「たしかに好きだってすぐにわかりますね」

 凛が履いている靴は、まさにアニメのキャラクターが描かれているものだから。

 DVDを再生して、遼生さんは車を発進させた。

 少しに時間近くも凛が退屈せずに車に乗れるか心配だったけれど、DVDのおかげで助かった。凛はずっと集中して見続けてい
た。

 私はというと、久しぶりに遼生さんが運転する車の助手席に乗り、緊張している。

「今日は晴れてよかったね」

「そうですね」