「悪い、違う服で来ればよかったな」

「いいえ、それを言ったら私も同じですから気にしないでください」

 とは言うものの、照れくさいというか気まずいというか……。お互い口を閉ざす中、凛が不思議そうに「ふたりとも、どうしたの?」と聞いてきた。

「ううん、なんでもないよ」

「ごめん、凛ちゃん。じゃあさっそく出発しようか」

 そう言って遼生さんは後部座席のドアを開けてくれた。

 凛をチャイルドシートに乗せて、私も隣に乗ろうとしたところ、遼生さんに止められた。

「萌ちゃんは助手席に乗って。俺、隣に誰か乗っていないと眠くなっちゃうんだ」

 昔はそんなこと、一度も言わなかったよね?

「もしかして助手席だと酔っちゃう?」

「いいえ、そんなことはないですが……。えっと、わかりました助手席に乗りますね」

 凛のシートベルトがしっかりと締まっていることを確認してドアを閉める。すると遼生さんは真摯に助手席のドアを開けてくれた。

「どうぞ」

「すみません、ありがとうございます」

 戸惑いながらも乗ると、ドアまで閉めてくれた。

「すごいね、りょーせー君! まるで王子様みたい」

 彼が運転席に回っている間に凛は興奮気味に言ってきた。