「あら凛、偉いわねママのお手伝い?」

「うん! 凛がおにぎり作ってるの」

「それはすごいな」

 ケーキ作りを終えた明子さんと文博さんがキッチンに入ってきて、凛が握ったおにぎりを興味深そうに眺める。

 遼生さんと偶然にも会ってしまったこと、凛が懐いて三人で出かけることになったことを伝えると、ふたりは複雑そうだった。

 あれほど私と関わらないように、凛と会わせないようにしていたのに、ふたりは結び付いてしまう。目に見えない強力な磁石が私と遼生さんについているのでは?なんて言われてしまった。

 そして遼生さんが記憶を失ったことにも、なにか意味があるのかもしれない。凛が懐いたのも、やはり本当の父親だから幼いながらになにかを察知したのかも……とも。

 こうなってしまった以上、私が後悔しないように行動すればいいとも助言してくれた。

 それを聞いて、私はどうしたいのだろうと悩んだ。最後の思い出にと三人で出かけて、それで終わることができるのだろうか。