「はじめまして、凛ちゃんって呼んでもいいかな?」

「うん、いいよ。お兄ちゃんのお名前はなんて言うの?」

「ごめんね、先に言わなくて。碓氷遼生って言います」

 遼生さんから名前を聞くと凛はすぐに「じゃあ、りょーせー君ね」って言った。

「うん、そうだよ。可愛いな、凛ちゃんは」

 凛がうまく遼生と呼べないところがツボに入ったようで、遼生さんは愛おしそうに凛を見つめる。

 その姿に複雑な思いで心が埋め尽くされていく。

 絶対に会わせないようにと気遣っていたのに、ふたりを引き合わせてしまった。でもまだ遼生さんに気づかれていない。どうにか今を乗り切れば大丈夫だよね。

「えへへ、ママー。凛、可愛いって」

 遼生さんに褒められたのが嬉しかったようで、凛は照れくさそうに私の服の裾を掴んだ。

「うん、凛は可愛いよ」

 動揺を隠しながら凛に答えた。