「いらっしゃいませ。おひとり様ですね、空いているお好きな席にどうぞ」

 店員の元気で大きな声で店中に響く。少しして聞き覚えのある声が聞こえた。

「あれ、萌ちゃん?」

 ドキッとしながら声がしたほうに目を向けると、そこには遼生さんが立っていた。私だと確信を得ると、彼は駆け寄ってきた。

「やっぱり萌ちゃんだ。まさか偶然会えるとは思わなかったからびっくりしたよ」

 笑顔の彼に対し、私は突然の事態に驚き固まってしまう。

 だってまさかここで遼生さんと会うとは夢にも思わなかったから。どうしよう、凛……!

 咄嗟に凛を隠そうとしたものの、それはなんの意味もないことだとすぐに気づく。

 初対面のふたりはお互いを見つめ合っていた。

「ママ、このカッコいいお兄ちゃんはだれー?」

 私の手をトントンしながら聞いてきた凛に、どう説明したらいいのか戸惑う。

「えっと……ママってことは、萌ちゃんの娘さんなんだね」

 戸惑っているのは遼生さんもだった。凛を見て、どう思っただろうか。

 彼の反応が怖くて、下手に言葉を発することができなくなる。

「ごめん、勝手に独身だと思っていたからびっくりしちゃって」

 そう言うと遼生さんは凛を見つめた。