少しでも凛の父親は素敵な人だったとわかってほしくて伝えると、凛は「本当?」と大きな声で聞き返した。

「凛のパパ、すごいね!」

「うん、すごい人だったよ」

 たとえひどい振られ方をしたとしても、遼生さんは素敵な人だった。優しくて真面目で思いやりがあって……。彼の長所すべてが偽りだったとは思えない。

「そっかー。……会えないのは悲しいけど、でも凛にはママがいるから寂しくないよ。だからね、ママ。ママはなにも悪くないからね?」

 私を慰めるように凛は背伸びをして私の頭を撫でてくれた。

 小さな手が頭上で行き来するたびに、目頭が熱くなっていく。

「ありがとう、凛。ママもね、凛がいるから悲しくも寂しくもないんだ。凛と毎日一緒にいられてすっごく幸せなの」

 涙が溢れそうになり、凛を抱きしめた。

「凛も幸せだよー」

 同じように抱きしめ返してくれた凛に愛おしさが込み上がる。

「ふふ、ありがとう」

 今は会えない理由を詳しく話すことはできないけれど、凛がしっかりと物事を判断することができる年齢になったら、すべてを打ち明けよう。

 遼生さんとの出会いから別れ、彼がどんな立場にいる人で、その娘であるということがどういう状況なのか、包み隠さずに全部話そう。

「あ、そうだ凛。和泉君がね、今度の土曜日に一緒に遊ぼうって言ってたよ」

「えぇー! 本当? やったー! 楽しみー」

「よかったね」

「うん! あ、和泉君と凛のふたりで遊ぶから、ママは来ちゃだめだよ」

 和泉君と同じことを言われ、思わず笑ってしまった。