いつまで経っても泣き止まない私に遼生さんは困惑しながら涙を拭い続ける中、店のドアが開いた。

「こんにちは、萌ちゃん。ちょっとお菓子の詰め合わせをお願いしたいんだけど……」

 店に入ってきたのは和泉君で、私たちを見て足を止め、大きく目を見開いた。

「萌ちゃん?」

「あっ……」

 突然のことに私も遼生さんも固まってしまう。すると我に返った和泉君は遼生さんを睨みつけた。

「あんた、萌ちゃんになにしたんだよ!」

 和泉君は勢いよく遼生さんに詰め寄ると、私の涙を拭っていた手を掴んだ。和泉君のあまりの剣幕に私は慌てて止めに入る。

「違うの、和泉君! 碓氷さんは勝手に泣き出した私を慰めてくれていただけなの」

「勝手に泣いたって、どうして? こいつになにか言われたからじゃないの?」

「本当に違うから」

 強く否定すると和泉君はやっと信じてくれたようで、「手荒なことをしてしまい、すみませんでした」と言いながら遼生さんの手を離した。

「いいえ、大丈夫です」

 笑顔で対応する遼生さんに和泉君は私を見た。

「ところでこちらの人は誰? ずいぶんと萌ちゃんと親しそうだけど……」

「あ、和泉君は会ったことがない? 商店街のプロジェクトを担当している碓氷遼生さん」