その表情も何度も見て鮮明に覚えている。……四年経っても変わっていないんだね。気を緩めたら泣いてしまいそう。

「本当に私のオススメでいいんですか?」

「うん、お願い」

 期待の眼差しを向けられ、私が文博さんの作るケーキの中で一番好きな季節のフルーツタルトを指差した。

「私はサクサクのタルト生地に、カスタードクリームとフルーツがたくさんのったフルーツタルトが大好きなんです。甘酸っぱくて何個でも食べられちゃいます」

 昔も迷って決められないから、オススメを聞かれた時に同じことを彼に伝えたことがある。その時、たしか遼生さんは……。

「そっか。じゃあ出ているだけ買っていこうかな」

「えっ?」

「だって萌ちゃん、何個でも食べられちゃうんでしょ?」

 屈託のない笑顔で言う今の遼生さんと、昔の遼生さんが重なる。

 そうだった、以前も遼生さんは『店に出ているだけ買っていこう。だって何個でも食べられちゃうんだろ?』って言っていた。

 記憶を失っていても、同じ言葉が返ってくるなんて……。

 複雑な気持ちが込み上がってきて、鼻がツンとなる。

「出ているだけだと五個もありますけど、本当におひとりで食べられるんですか?」

 平静を装って聞いたら、遼生さんは「さすがに食べ過ぎかな」と頭を悩ませた。