気になるけれど、彼とはもう関わらないと決めた以上、聞くことではない。それに聞いたって現実はなにも変わることはないのだから。

 今の遼生さんには私との記憶がないとしても、私は彼にはっきりと振られたのだ。それに今さら凛の存在を知られたら、様々な問題が降りかかり、凛を苦しめることになりかねない。

「あ、今日はショートケーキが残っている。でもモンブランも食べてみたいんだよな」

 とにかく遼生さんが東京に戻るまで、客と店員の立場でいればいいんだと自分に言い聞かせるものの、真剣な表情でケーキを選ぶ姿を見ていると、どうしても昔を思い出してしまう。

 遼生さんは甘い物が大好きな人だった。出会ったばかりの頃は甘党なのを必死に隠していたよね。

 私がネットで有名になったパフェを食べに行きたいって提案したら、遼生さんも食べてみたいと思っていたようで、それはもろに顔に出て私にバレてしまったのだ。

 その時の遼生さんは恥ずかしそうだったな。でもそれをきっかけに私も遼生さんもお互い素の自分を見せ合おうってなって、ますますお互いを好きになっていったんだ。

 今の遼生さんは甘党なことを隠していないんだね。それとも私はなんとも思っていない相手だから、隠すほど恥ずかしくないってことなのかもしれない。

「だめだ、決められない。萌ちゃんのオススメはなに?」

「え? 私のですか?」

 急に委ねられて驚きの声を上げると、遼生さんはショーケースから私に目を向けた。

「あぁ、決められそうにないから萌ちゃんのオススメを教えて」

「……っ」

 困ったようにはにかむ姿に、胸がギューッと締めつけられる。