ホテルの一階にコンビニがあったことを思い出し、さっそくコンビニでおにぎりと購入した。

 お茶を飲んでからおにぎりを一口食べると、美味しくてなぜか涙が溢れた。

「美味しい……。こんなに悲しくてつらいのに、美味しいよぉ」

 つらいのにお腹が空くのは生きている証拠。どんなに苦しくて悲しいことがあったとしても、生きている以上前に進んでいくしかないよね。

 ずっとホテルで暮らしているわけにはいかないし、家には絶対に帰れない。それに帰ったとしても内定を断った私には仕事がない。

 もぐもぐと食べ進め、最後のお茶を飲んで一息つく。

 遼生さんに気持ちがない以上、どんなに私が想いを寄せたって迷惑になるだけ。今すぐには無理でも、少しずつ彼に対する愛情を失くしていかないと。

 涙を拭って両手で頬を叩いた。

「いつまでも泣いていたって仕方がない」

 言葉にして自分を奮い立たせ、立ち上がった。そして急いでスマホの充電をする。

 電源を入れるとすぐに電話がかかってきた。自宅からで長く呼び出し音が鳴り続けた後、確認したら数えきれないほどの着信とメッセージが届いていた。

 もし、両親からの電話に出たら怒られたとしても許してもらえるだろうか。……きっとふたりなら許してくれるだろう。