「嘘、でしょ」

 合鍵を使って入った彼のマンションはもぬけの殻。家具はもちろん、カーテンさえもついていない状態だった。

 信じられない光景に、膝から崩れ落ちる。

「とにかく連絡……」

 バッグからスマホを手に取ったものの、震えてしまい落としてしまった。

 ギュッと手を握りしめて自分を落ち着かせる。

 何度もかけているのに連絡が繋がらない。マンションの荷物はほとんど置いていくと言っていたのに、なにも残っていない。
 これはどういうこと? 昨夜の電話では一緒に駆け落ちをすると約束をしていたよね? それなのに――。

 電話をかけてもやっぱり繋がらず、通話を切った。

 どうしたらいいのかわからず、殺風景なマンションの部屋で蹲ること数分、メッセージが届いた着信音が鳴った。

 急いでスマホを確認すると遼生さんからで、一気に気持ちが上昇する。タップしてメッセージ画面を開き、内容を目で追う。

【別れよう。迷惑だから、もう二度と連絡してこないでくれ】

「なに、これ……」

 一方的な別れのメッセージに目を疑うが、たしかに発信先は遼生さんで間違いない。じゃあ遼生さんは本当に私との別れを望んでいるってこと?