十時二十分前、待ち合わせ場所の改札口前に到着した。行く先もこれからふたりで窓口で決める予定だ。しかし、さすがに二十分前は早かったかもしれない。

 コインロッカーに預けておいた荷物を手に、彼が来るのを待つ。

 土曜日ということもあって、多くの人が行き交う中、約束の十時を過ぎても遼生さんは来なかった。スマホを確認しても彼からの連絡はない。

「ただ、遅れているだけだよね」

 とはいえ、待ち合わせをして遼生さんが遅れてくることは今まで一度もなかった。たった一回遅れてきた時は、ちゃんと連絡をしてくれたのに。

 不安に襲われながらも待つこと二時間が過ぎ、十二時を過ぎた。
 
 その間、メッセージや電話をかけてみたものの、メッセージには既読が付かず、電話にも出ない。

 もしかしてなにかあった? でも連絡がつかない以上、私には待つことしかできない。

 どうしよう、彼の家に行ってみる? だけどそれで行き違いになったらどうする? スマホが壊れて連絡を取ることができない状況かもしれないし。

 様々な考えが頭をよぎるが、どうすることもできず待ち続け、とうとう十八時を回ってしまった。

「さすがにおかしい。絶対なにかあったんだ」

 キャリーケースを引いて、駆け足で彼のマンションへと向かう。

 遼生さんは、今月いっぱいでマンションの契約を解除したと言っていた。怪しまれないように家具などは置いていき、契約解除後に大家さんに家具は売るなり、次の人に使ってもらうなり好きにしていいと伝えてあるとも言っていたのに……。