母が用意してくれた朝食は、大好きな甘い厚焼き玉子に鮭の塩焼き、かぼちゃのサラダに味噌汁とお漬物。
 どの料理も噛みしめて完食した。

「今日は友達と買い物に行ってくるね」

「そうなの? じゃあお母さんとお父さんも買い物に行きましょうか」

「そうだな、ついでに温泉でも入ってくるか?」

「いいわね」

 盛り上がるふたりに「じゃあ私、行くね」と伝えると、「いってらっしゃい」「気をつけてな」と笑顔で送り出してくれた。
 その姿に涙が零れそうになるものの、必死にこらえて笑顔で「いってきます」と答えた。

 だめだ、このまま家にいたら泣いてしまいそう。

 急いで家を出て駆け足で駅へと向かっていく。

 遼生さんと一緒に生きていくと決めたはずなのに、両親とはもう二度と会えないかもしれないと思うと寂しくなってしまった。

 親不孝なことをするのだから、私に寂しいって思う資格などないのに……。

 最寄り駅から電車に乗り、東京駅に向かう道中はずっと心の中で両親に謝罪の言葉を繰り返していた。

 きっといつか、遼生さんと駆け落ちして正解だったと思えるほど、幸せになることが私にできる唯一の親孝行であると信じたい。

 罪悪感を必死になくして、遼生さんとの待ち合わせ場所へと向かった。