初めて結ばれた旅館のように、天の川まで見えるほど空気が澄んでいるところがいい。近くには川があって、川辺でバーベキューをしたり、将来結婚して子供が生まれたら川遊びに出かけたりしたい。

 そんな妄想をしていたら身体中が熱くなり、手で仰いだ。
 両親を裏切るかたちになってしまうことに対しての罪悪感はある。でもそれ以上に遼生さんとふたりで幸せに生きていきたいって気持ちのほうが大きいんだ。

「ごめんね。お父さん、お母さん」

 これまで育ててくれたことに対する感謝の気持ちと、親不孝な娘でごめんという謝罪の気持ちを手紙に込めた。
 それとささやかながらふたりにそれぞれプレゼントも用意した。

 きっと手紙とプレゼントに気づく頃は、私は東京にいないだろう。明日の朝も、いつも通りに朝食を食べることができるかな。……いや、気づかれないように食べないと。

 最後に自分の部屋から見える星空を目に焼きつけて部屋に戻り、早めにベッドに入った。

 次の日、休日は父も母も少し遅い時間に起きる。それに合わせて私も起床して身支度を整え、リビングに降りて行った。

「おはよう、萌」

「あら、やっと起きたのね。大丈夫? 来月から社会人になるっていうのに」

 父は優しく挨拶をしてくれて、母は小言を言う。いつもの日常に目頭が熱くなる。

「おはよう。大丈夫、ちゃんと起きられるから」

 両親には、遼生さんとの結婚は諦めると伝えてある。だからふたりともすっかり安心しきっており、社会人になって新しい出会いをあると励ましてもくれた。