すべてが順調で幸せな日々は、この先もずっと続くはず。そう信じていたけれど、現実は違った。

 私の大学卒業が半年後に迫った頃、私たちは両家の挨拶に行った。でもお互いの両親に反対されてしまった。
 とくに遼生さんのご両親には大反対され、二度と顔を見せるなとまで言われてしまった。

「ごめん、萌。うちの親が萌にひどいことを言って」

「いいえ、遼生さんが謝らないでください。それに、言われて当然だと思っていますから」

 遼生さんの実家を後にして、私は家に帰ることなく彼のマンションにやってきた。ソファに腰を下ろした私たちは、自然と肩を寄せ合う。

「遼生さんに釣り合う婚約者がいたんです。それなのに私が遼生さんと結婚したいと聞いたら、誰だって怒ります」

 実は今日、初めて彼の婚約者が金融機関の令嬢だと言うことを知った。あまりに釣り合いのとれた家柄に、どんな未来が待っていても大丈夫と決心した心が揺らいだ。

 それは、私の両親にも反対されたことが大きく影響しているのかもしれない。

「正直、俺はこうなることを少なからず予想していて……。その時はどうするかも考えていた」

 ポツリ、ポツリと話しながら遼生さんは一度小さく深呼吸をした。