「それは褒めてくれている?」

「もちろんです。……ただ、私以外の人にも素敵なことをしたのかと思うと、ちょっぴり妬けちゃいます」

 私とは違い、遼生さんは昔からモテていたはず。そんな人にいなかったとは考えられない。

 いつもだったら恥ずかしくてなかなか自分の思いを伝えることは難しいけれど、今夜は特別な日だったからだろうか。素直な気持ちが口をついて出た。

 しかし遼生さんからはなんの反応も返ってこなくて、居たたまれなくなる。

「なにか言ってください」

 彼の胸に顔を埋めて言えば、遼生さんは「ごめん、あまりに可愛くて心臓が止まりかけていた」なんて言う。

「そんなことで嫉妬するとか可愛いな、萌は」

「私にとっては重要なことですよ?」

 チラッと彼を見上げれば、愛しそうに見つめていて頬が熱くなる。

「そっか、ごめんごめん」

 優しく髪を撫でられ、再び彼の胸に顔を埋めた。

「萌と付き合う前に、何人かと付き合ったことはあるけど、誰ひとり俺自身のことを見てくれた人はいなくてさ。そんな彼女たちに萌みたいに喜ばせたい、笑った顔が見たいと思ったことは一度もなかった。だから萌の言うロマンチックなことは全部初めてだったよ」

「……本当ですか?」

 ちょっぴり信じられなくて聞き返すと、遼生さんは「本当」と言って私の旋毛にキスを落とした。