だって遼生さんにとったら、私と出会って間もない。それなのに……。

「話をして萌ちゃんのことを知れば知るほど、その思いは大きくなっていった。だから金曜日に凛ちゃんとふたりでいるところを見た時は、ショックを受けたよ。でも既婚者じゃないなら、問題はないよな? 恋人もいないだろ?」

「いませんけど……」

 戸惑う私に遼生さんは「それなら俺に凛ちゃんの父親になるチャンスを与えてほしい」と言う。

「東京に戻っても、頻繁にふたりに会いに来る。萌ちゃんと凛ちゃんに好きになってもらえる時間をくれないか?」

 真っ直ぐな彼の思いに、気持ちが溢れ出す。

 私……やっぱりまだ遼生さんのことが大好きなんだ。全然気持ちは薄れていない。むしろ再会してからもっと大きくなっている気がする。

 本音を言えば、彼が記憶を失ったことを忘れて、また一から関係を始めたい。でも私には彼と過ごした二年間の記憶がある。