「では、素敵な夜に乾杯!」
「かんぱーい!」

遥の高い声が響く。

「あ~、このワイン美味しい!ね、さくら」
「うん。とっても飲みやすいね」
「そう?良かった。料理もどうぞ。オススメはね、この、ほほ肉のワイン煮込みと、サーモンとチーズの包み焼き」

栗林が、さくらと遥の皿に切り分けてくれる。

「美味しい!」
「ほんと、ワインとも合うね」

二人が食べるのを、にこにこと眺めている栗林に、さくらが声をかける。

「あの、栗林さんも食べてくださいね」
「ありがとう。でも、美味しそうに食べてくれる女の子を見てると、ついもっと食べて欲しくなるんだ」

きゃっ!と、遥が頬に手を当てる。

「栗林さん、そのスタイルとその性格で、本当に彼女いないんですか?私、絶対信じられない」

遥が真顔で言うと、栗林は苦笑いする。

「それは、喜んでいいのかな?それとも悲しむべきかな?」
「うーん、私も迷ってるんですよね。本当にいい人なのか、それとも何か裏があるのか…」

ちょ、ちょっと遥!と、さくらは慌てて止める。

「いや、なかなかストレートでおもしろいね。遥ちゃん、だっけ?」
「キャー!そうです!遥ですー!」

名前を呼ばれて遥は、舞い上がりそうになっている。

「そう言う遥ちゃんこそ、美人なのに彼氏はいないの?」
「ヤダー、そんな、美人なんて!彼氏も、もちろんいないですよー」
「そうなんだ。俺の周りでも、受付のあの子いいなって言ってるやついるよ。今度、紹介しようか?」
「ぜひぜひ!お願いします!」

さくらは、二人の会話を聞きながら、ひたすら美味しい料理を堪能していた。