「…さくら」

切なそうに自分の名を呼ぶ顔が、すーっと遠のいていき、ゆっくりとさくらは目を覚ます。

(まただ…。一体、誰なの?どうして毎日こんな夢を)

考えても分からない。
だが日に日に、見ている夢がはっきりしていくような気がする。

実際、目を覚した今も、相手の顔をなんとなく思い出せる。

どこか悲しみを秘めたような瞳、キュッと結んだ口元、真っ直ぐ自分を見つめる切なげな表情。

(どうしてそんな顔で私を見るの?)

心の中で思わず問いかけるが、もちろん答えは返ってこない。

さくらはため息をつくと、諦めたように起き上がった。