緋織先輩との新たな関係が始まった翌日。
俺は、文芸部の部員となった。
後ろで入部届けを出す様を笑顔で見ていた緋織先輩。
なんか、おかしい。
どちらかというと緋織先輩が気にしていたであろう昨日までの落ち着いた姿は、あんまり気にしていなかったけど。
なんかこれは……おかしいような気がする。
「スイくんっ、部活決定おめでとう! 記念にドーナツを作ったよっ!」
夕食の後、甘い香りが漂うふっくらとしたドーナツが振る舞われた。
「ありがとうございます……いただきます」
「食べて食べてっ!」
口に運ぶ動作を食い入るように見つめられて食べにくい。
味の感想をめちゃくちゃ求めるような視線が痛かった。
「美味しいです」
「よかったっ……! スイくんは料理できる人、好き?」
「……まぁ、はい」
「へへ、そっかぁ……」
緋織先輩のはにかみ顔。
破壊力、ダイナマイト級。
可愛い。好きなのやめるの、やめたい。
でも。なんかその、これって……。
子供が親に褒められるために頑張るみたいな、そういうこと……?
「じゃあっ、運動できる人は!?」
「運動は……どっちでも」
「……そっか……」
明らかにしょんぼりしている。
運動ができるといえば……緋織先輩……?
「ど、どちらかといえば好きですけど……」
「!! えへへ、そうなんだぁ……」
な。
なにこれ。
なにこれなんだこれ。
ま。まっ、て。