「ほんとーにっ! 成世先輩の言うことには耳を貸さなくていいからねっ!?」



 ドアを閉めた玄関先。


 くるっと後ろを振り向いてスイくんに向き直る。


 スイくんは少しだけ首を傾げて、まつげで目に影を作った。



「わかってます。だから、こうやって自分の力で頑張ろうとしてるんですけど……」



 眉を下げたスイくんが、繋いだ手の指先で私の手の甲をつつ……と撫でる。



「……伝わってないですよね」

「えっ……?」

「わかってます……これも」



 撫でられた場所がゾワゾワと痒い。


 思うがまま掻いてしまったら、赤くなってピリピリ痛んじゃうだろうな。


 あ、これ……言葉をちゃんと選ばないといけないやつだ。


 スイくんの行動が、成世先輩と関係ないっていうなら。



「えっと、じゃあスイくんなりに、自分の考えで私と仲良くなろうとしてくれてたってこと?」

「はい……、はい? わかってるじゃないですか」

「え、だって手を繋ぐのは仲良くないとしない、よね」

「……??、? はぁ?」

「ごっ、ごめんっ、違ったかな!?」



 怒ってる!? またお説教コース!?



「はぁぁ、わかりません……緋織先輩がどこまてわかってるのか、俺にはわかりません……」



 スイくんは項垂れて、その場に座り込んだ。


 手だけは離れることなく、むしろ握る力は強くなる一方。