「どうやろ、彗くん。キミ、このままやと百パーフラれると思わへん?」

「……何が言いたいんですか」

「聞いてくれんの?」



 グッと奥歯を噛み締める。


 こんなやつのことを信じるわけにはいかない。


 だけど、今の話を嘘だと決めつけることすら俺にはできないのだ。


 俺は何も、何もかも、知らないから。



「協力しようや? 俺は藍月緋織の本性を暴きたい。彗くんも、藍月緋織の中に踏み込むために彼女を理解する必要がある。

藍月緋織のこと、知りたいんやろ?」



 視界が揺れる。突然地面が柔らかくなったかのように足がおぼつかない。


 首を、縦に、振ってはいけない。


 振るな。


 振るな。


 どうにかして気を逸らさないと、従ってしまいそうになる自分の弱さが苛立たしい。



「……っ、お断り、します」

「俺が独自のルートで緋織ちゃんのことをもっと深く調べるから、彗くんはそれがほんまか本人に確認してくれたらええ。それだけでええんや」

「しつこい!」



 俺はナルセを壁に押し付け、抵抗される前にブレザーのポケットへ手を突っ込んだ。



「ちょ、え!?」



 驚きが先行して動きが追い付かないナルセが声をあげる。


 引き抜いた俺の手の中。パッとスマホを起動させた、その画面には……。


 え、これって……。