「彗くんは、緋織ちゃんのどんなとこが好きなん?」
「……は?」
そんなことを聞くために呼んだのか?
呆れた。帰る。
「おっと、ちょお待ちや」
「失礼します」
「ええやん、ちょっとだけ。ちょっとだけ教えてや。先っちょだけ!」
「失礼します」
ぐぐぐ。腕を掴まれて引き戻されそうになるのを力付くで振り払おうとするも、失敗。
同じくらいの強さで反対方向に引っ張り合って、体が全く動かない。
「アイスブレイクしよう思ただけやん! ほんまは見てほしいもんがあるんや。それだけでも見てって!」
「次つまらないことを聞いてきたら殴ります」
「普通に暴力で訴えかけようとするやん」
「こわ~」と肩をすくめるナルセ。
……イラァ。
「わかったわかった。これやねんけどな」
そうしてようやく話が進む。
ナルセが取り出してきたのは一枚の紙だった。
どうやら部活で発行した新聞記事らしい。
【今話題の伝説女子、藍月緋織に密着!】
というのが一番大きな文字で書かれた、見出し。
緋織先輩の記事だった。
「去年書いた新聞やねんけど、お蔵入りになってん。――主に、ここが原因や」
蛍光マーカーで文章に線を引き始める。
終わって紙を手渡されると、強調されたその場所に自然と目を通すことになった。