新聞部の部室は、東棟一階の端だ。


 閉まっているドアをノックせずに開ける。


 中には新聞部の部長……ナルセ、だっけ。ナルセの後ろ姿だけがあった。


 ナルセはビクッと肩を揺らした後、持っていたスマホをブレザーのポケットに入れながら焦った様子で俺の方を向く。


 ……スマホにやましいことがあるのは本当らしいな。



「彗くん! ほんまに来てくれたんやなぁ」

「さっさと終わらせてください」

「冷たいなぁ。あったかいお茶でも飲んでいくか?」

「何も用がないなら帰りますが」

「そんなこと言ってええの? この写真……」



 ナルセが写真を掲げようとした。間髪いれずに手を伸ばす。


 ――グシャ。


 奪い取って握りつぶした。


 こんなので脅せたと思ってるなら笑ってしまう。



「緋織先輩がいないなら、こっちだってなにしてもいいんですよ」



 俺は腹が立っているんだ。


 ただでさえ緋織先輩と距離を縮めるのに苦労しているところ、こんなやつの情報に踊らされそうになっていたことに。


 緋織先輩が子供っぽいから、なんなんだ。


 振り向かせる方法なんていくらでもあるはずだろ。



「……はは、データで残ってるから別にええけど」

「……」

「本題に入ろか、彗くん。藍月緋織のことや」

「……でしょうね」



 ナルセは窓の方へゆっくりと歩き、縁に手をかけながら俺を振り返る。


 ニヤッと卑しいを浮かべて。