正直、わからない。


 彼女は色々と隠すのが上手い。もしかしたら、気付いててあの態度を取られている可能性だってある。



「俺はな、緋織ちゃんが子供に見えるんや」



 新聞部の人は一人で勝手に話し始めた。


 前も言っていた。緋織先輩に手を出すのは、子供を相手しているようで気が引けるって。


 俺はそんな風には思わない。


 むしろ、緋織先輩は誰よりも大人びていると思う。


 ふざけたことを言うな――そう睨み付けた俺に、新聞部の人はニヤリと意地悪く笑った。




「もっとちゃんと言おか。子供っぽく、振る舞ってるように見えるねん」




 ……そうかよ。


 実際そうだったとしても、俺の気持ちに変化はない。


 なんて平然を装う俺とは別に、不安に襲われる俺もいた。


 もし、緋織先輩がわざと恋愛感情を持たないようにしているとしたら……。


 俺の気持ちは、迷惑になる。
 


「俺がタダでこんなに情報与えんの珍しいで? お礼に今日の放課後一人で新聞部に来てな」

「行きません」

「なぁ、これって新聞に載せていい写真やったっけ?」



 緋織先輩の写真の後ろから、別の写真が現れる。


 俺が緋織先輩と一緒に家へ入っていく光景が写し出されていた。


 はぁ……いつの間に。最初から自分の思い通りに動かす気しかなかったんじゃないか。



「どんなことが起きてもええんやったら、この家に帰ったらええけど?」



 楽しそうに俺を覗き込む悪魔に、俺は舌打ちをして「わかりました」と返した。