え、緊張してるの?


 伝染してしまって、私まで心臓の音が大きくなる。



「俺は好きな人の名前しか呼ばないし、好きな人にしか優しくしないんです」

「……?」

「最悪一生そばにいられるなら、恋人じゃなくてもよかったんです」

「でも……あれ?」



 スイくん、私にめちゃくちゃ優しいよ。名前も呼んでくれてるし……?



「それって、好きな人の話だよね……?」

「当たり前じゃないですか。まだわかりません?」

「だ、だってまるで」



 まるで――私のことを言われているみたいで。


 って、自意識過剰なんだけど。



「合ってますよ。だからこんなに心臓が早いんじゃないですか」

「え――」



 思考がまとまるより、前に。


 辺りが温かな香りでいっぱいになった。



「初めて会ったときからずっと、……めちゃくちゃ意識してますよ」



 ――もう絶対、置いていきませんから。


 ――俺だって緋織先輩がそばにいてくれたらいいなって、思ってるからです。


 ――ずっと好きで……好きで好きで、ずっと一緒にいたい相手なんです。



 思い返せば、彼からのサインは何度も出ていた。


 私は子供で、すぐに怖くなって考えるのをやめてしまう卑怯者で、誰かに似て自分のことばかり大事にしてしまうから。


 まさか、こんな素敵な人がずっと見ていてくれたなんて思えなかった。




「――大好きです、緋織先輩。俺は、あなたに笑顔でいてほしい」