「本当に、ファミレスでよかった?」

チカくんは引き出しから言葉をひとつずつ慎重に取り出すように訊いた。

「うん。あたし、ファミレス好きだから」

「本当に?」

「うん。本当に」

「無理してない?」

「してないよ。ここのパフェおいしいよ」

それに、また店内で泣かれたりしたらたまらない。

前回、ちょっとこじゃれたイタリアンのお店で会ったとき、チカくんは泣いたり泣き止んだりを繰り返し、店内の客はあたしたちを盗み見た。
まるであたしがチカくんを泣かせているかのような状況。

勘弁してよ。

しなしな乾いていく生ハムとチカくんを交互に見ながら、心の内で何度も何度も項垂れた。

だから今日はファミレスで会うことを提案した。
ここなら子どもはぎゃあぎゃあピィピィうるさいし、みんなそれに負けじと大きな声で話すから、チカくんが泣くくらい誰も気に留めない。

「パフェか……。おれも食べようかな」

「えっ。チカくん、パフェとか食べるのっ?」

びっくりしていると、チカくんは目を丸くしてしばし黙り込んでから言った。