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べたつく肌に、Tシャツがじっとりとへばりつく。

夕方だというのに汗が止まらない。
ぱたぱたとTシャツを扇いでみても、もちろん乾くわけがない。
髪を結わけば少しは涼しいかもしれないけれど、顔の輪郭を隠したいから結わきたくない。

軽く苛立ちながら、手垢を避けてファミレスのガラス扉を押した。
あたしを見つけたチカくんの真っ白な手がひょいと上がり、左右に振られる。

そこまでしなくたってわかるよ。
まったく呆れてしまう。

チカくんはいちいち動作が大きい。
手足が長いから尚更そう見えるのかもしれない。


目に刺さりそうなくらい長い前髪から覗く瞳が、あたしをじっと見つめる。

「来てくれて、ありがとう。いち()

重低音の声はゆっくりで、空きっ腹によく響く。
あたしはこめかみから滴りかけた汗をハンカチで拭い、メニューをめくった。

拭かれたばかりなのか、ページとページがぴたぴたくっつく。
ベルを鳴らして店員に注文すると、すぐにお冷やを出された。
額に当てたいのをこらえて喉に流し込めば、グラスはすぐに空になった。