あのやわらかそうな乳に惹かれないんだ、この人。

それが綴の第一印象。
女のあたしですら魅力的だと思う乳だった。

こんなことを考えてしまうのは、いまの世の中では怒られてしまうのかもしれないけれど、あそこまで乳を出されていたらなにも感想を抱くな、という方が無理である。


――ありがとう、助かった。なに食べてるの。

――海老のすり身を、なんかしたやつ。

――名前は?

――いち花。

――どういう字?

――平仮名のいちに、簡単な方の漢字の花。

――いち花ちゃんか。いち花ちゃんは、なにしてる人?

――大学生。

――じゃあ、俺とあんまり(とし)は変わらないか。いいな、学生か。

――まあ、悪くは、ないと思う……。

――いち花ちゃんさ、うちのバンド知らないし、興味もないよね。
あ、怒ってないよ。そういうのはぜんぜん、どうでもいい。

――なんでわかったの?

――なにも訊いてこないから。
訊かれてないけど、自己紹介してもいい? 覚えなくてもいいから。


その日から、あたしは綴といっしょにいる。