視えた。
赤い糸が写真に向かって繋がっている。

「息子さんの赤い糸が、写真の方と繋がっています。」

母に報告した。
あからさまに嫌な顔をする伊集院様。暗い顔の息子さん。

「では、こちらのご縁を続けますか?切りますか?」
母は息子さんに聞いた。しかし伊集院様は即座に言った。
「もちろん切ってください!」
「……それは、伊集院様の御意見ですが息子さんはそれで宜しいのでしょうか?」

母は息子さんの顔をじっと見ながら話を続けた。

「切ると写真の方とは運命が離れていきます。それでいいと息子さんは思ってますか?あと伊集院様……以前もお話したとおり、切っても切れない縁もございます。また同じ方といつの間にか赤い糸が結ばれる……その場合はとても強い絆ですので我々にはどうすることもできない、ということをご承知ください。」

伊集院様、まさかの常連(笑)
笑ってはいけないここで!我慢だ唯。
なんとか笑いを堪え、息子さんの顔を見た。

「僕は……、僕は、彼女と結婚したい。」

よく言った!息子さん!
まぁその歳だからちゃんと言えないほーがなんていうか……。

「なんですって!?あんなただの民間人なんかと結婚してどうするの!?あなたは伊集院を継ぐものなのよ!?然るべき女性とお付き合いをして……!」

ダン……ッ…!
息子さんがこぶしを机に叩きつけた。
長年の恨みのこもった目を母親に向けている。

「然るべき然るべきってなんだよ!僕の選んだ人は僕にとって然るべき人なんだよ!もう限界だ!僕は家を出る!伊集院は誰か違うやつに継がせてくれ!」

息子さんは写真だけ持って部屋から出て行ってしまった。
伊集院様は呆然としながら開けっ放しの障子の向こうを見ている。
今更ながらの反抗期?に驚いた母親ってところかな。
きっと何回も縁を切られてきたのかな……そりゃ納得できるものではないよね。
そんな中、母だけが静かに片付けながら一言言った。

「では、こちらの件は終了ですね。」