「ひとりで行きたいのか?」

 「うん。うち、旅行とか行けるほど余裕無かったでしょ。それに、お母さんも落ち着いてきているし、一度ひとりでゆっくり温泉とか行きたいなと思っていたの。ほら、足にもよさそうでしょ」

 光琉はわたしの肩を抱き寄せて、私の頭を自分の肩へ倒して聞いている。

 「……一泊くらいか?」

 「そんなわけないでしょ。足の傷によい温泉へ行こうと思っているんだ。少し長く行ってきてもいい?場所とか考えるけど、最低一ヶ月はいたいな。ホテルじゃなくて滞在型のコンドミニアムを借りて自炊してもいいから」
 
 光琉は黙って聞いていたが、向き直るとじっと私の目を見つめた。

 「俺と別れたいのか?」