母は新薬を投薬してから状態が良くなり、奇跡的に回復して退院した。
 病院近くに小さなアパートを借りて生活を始めていた。

 そのせいで、病院へ行くこともなくなり、本当に話さないどころか光琉の姿も見ることがなくなった。
 その日は母のところで夕飯を食べて帰ってきた。
 
 彼がマンションの下でこの間の茶色の長い髪の女性と抱き合っているのを目の当たりにした。
 その先は見たくなくて、マンションへ戻らず一旦、近くのコンビニへ入って時間を潰した。

 マンションへ戻り、部屋の鍵を開け、玄関を見ると光琉の靴がある。
 びっくりして、きびすを返して逃げようとした私を光琉が冷たい目で見ながら腕を引っ張った。
 
 「こんな時間にどこへ行く気だ?どこへ行っていた?」