「わあ、すごい!こんなに人が集まるものなのね」
稚沙と椋毘登は本日おこなわれる歌垣に参加するため、海石榴市へとやってきた。ここは八十の衢ともいわれ、四方からの道が交わっている。そしてここでは市などが度々開かれていた。
また春と秋には歌垣が行われており、若い男女がここぞって集まり、互いに歌を詠み交わしている。
「へえー、意外に多いな。歌垣なんて初めてきたけど、これはちょっと驚ろいたよ」
2人は自分達の身分を分かりにくくする為、今日は服も少し地味目にしていた。
その方が周りの目を気にすることもなく、気兼ねに参加出来て良いからだ。
また稚沙は二人の食事用として、簡単に食べられるにぎり飯と野菜の酢物、あとは冷たい水を筒に入れて持参していた。
「私も初めてだから何だか興奮してくる。今日のこの日の為に、和歌の練習までして来たんだから!」
稚沙は自信満々にして、横にいる椋毘登にそう話す。彼女は2人で歌垣に行けることになってからは、合間を見つけては一首一首と歌を詠んでいた。
また今日は控えめな服装をしているため、周りの人達も、まさか彼女が宮の女官とは思わないだろう。
「稚沙、お前やけに気合入っているな……」
一方の椋毘登は、今回の歌垣は元々余り乗り気ではないため、少し憂鬱そうだ。彼も今日は地味目な服装を装っているが、刀は目立つからと、短剣を懐に隠しもっていた。
「当然でしょう。さあ、もう歌垣が始まっているみたいよ。私達も早く加わりましょう!」
稚沙はそういうと、椋毘登の腕を掴んでぐいぐいと歌垣の輪の中へと入っていく。念願叶っての歌垣だ。彼女の心は、喜びと期待の思いでいっぱいだった。
歌垣の場では、何人かで固まって歌を詠んでいる者達もいれば、男女二人だけで互いに歌を交わしている場面も見受けられる。その為、各自がわりと自由に楽しんでいるようだ。
稚沙と椋毘登の二人は、何人かの集団の人達の横に二人して地面にゆっくりと腰をおろした。
そして稚沙が持ってきた水を口にしながら、まずはこの場の雰囲気を楽しもうと、暫く辺りを眺めてみることにした。
彼らにとっては初めての歌垣である。なのでその光景が二人には何とも新鮮に思える。
(何んかこういう雰囲気って素敵よね)
稚沙はすっかりその場の雰囲気に慣れてくると、ふとあどけない表情をして、椋毘登に目をやった。
彼も初めは散々嫌がっていたが、やはり初めて見る光景のためか、物珍しようにして周りをじろじろと見ている。
(椋毘登も何だかんだで、興味津々といった感じね)
稚沙と椋毘登は本日おこなわれる歌垣に参加するため、海石榴市へとやってきた。ここは八十の衢ともいわれ、四方からの道が交わっている。そしてここでは市などが度々開かれていた。
また春と秋には歌垣が行われており、若い男女がここぞって集まり、互いに歌を詠み交わしている。
「へえー、意外に多いな。歌垣なんて初めてきたけど、これはちょっと驚ろいたよ」
2人は自分達の身分を分かりにくくする為、今日は服も少し地味目にしていた。
その方が周りの目を気にすることもなく、気兼ねに参加出来て良いからだ。
また稚沙は二人の食事用として、簡単に食べられるにぎり飯と野菜の酢物、あとは冷たい水を筒に入れて持参していた。
「私も初めてだから何だか興奮してくる。今日のこの日の為に、和歌の練習までして来たんだから!」
稚沙は自信満々にして、横にいる椋毘登にそう話す。彼女は2人で歌垣に行けることになってからは、合間を見つけては一首一首と歌を詠んでいた。
また今日は控えめな服装をしているため、周りの人達も、まさか彼女が宮の女官とは思わないだろう。
「稚沙、お前やけに気合入っているな……」
一方の椋毘登は、今回の歌垣は元々余り乗り気ではないため、少し憂鬱そうだ。彼も今日は地味目な服装を装っているが、刀は目立つからと、短剣を懐に隠しもっていた。
「当然でしょう。さあ、もう歌垣が始まっているみたいよ。私達も早く加わりましょう!」
稚沙はそういうと、椋毘登の腕を掴んでぐいぐいと歌垣の輪の中へと入っていく。念願叶っての歌垣だ。彼女の心は、喜びと期待の思いでいっぱいだった。
歌垣の場では、何人かで固まって歌を詠んでいる者達もいれば、男女二人だけで互いに歌を交わしている場面も見受けられる。その為、各自がわりと自由に楽しんでいるようだ。
稚沙と椋毘登の二人は、何人かの集団の人達の横に二人して地面にゆっくりと腰をおろした。
そして稚沙が持ってきた水を口にしながら、まずはこの場の雰囲気を楽しもうと、暫く辺りを眺めてみることにした。
彼らにとっては初めての歌垣である。なのでその光景が二人には何とも新鮮に思える。
(何んかこういう雰囲気って素敵よね)
稚沙はすっかりその場の雰囲気に慣れてくると、ふとあどけない表情をして、椋毘登に目をやった。
彼も初めは散々嫌がっていたが、やはり初めて見る光景のためか、物珍しようにして周りをじろじろと見ている。
(椋毘登も何だかんだで、興味津々といった感じね)