稚沙は慌てて、椋毘登との待ち合わせの場所まで戻ってくる。
すると椋毘登本人は壁に体を少し持たれさせて、人待ち顔をしながら、辺りの光景を眺めている様子だ。
まだ少し幼さの残る顔つきはしているものの、日頃から鍛えていることもあり、割と体つきはしっかりしている。
そして彼は今日外に出かけるためか、少し控えめな服装はしているものの、あいかわらず腰にはたいそう立派そうな刀を携えていた。
(結局は、また椋毘登を待たせてしまった...)
稚沙はそんな彼の様子を見るなり、一目散にそばに駆け寄っていく。
「椋毘登、遅くなってごめんなさい!」
それから彼女は自身が待ち合わせに遅れてしまった経緯を、必死になって説明した。
だがその話を聞いた椋毘登は、意外にもとくに怒る風でもなく、至って平然としている。
「なるほど、稚沙らしいな。まぁその子供の親が見つかって、本当何よりだよ」
「あれ、椋毘登それだけ?もっと怒るかと思っていたのに」
「別に、お前が待ち合わせに遅れるなんて、今回に限ったことじゃない。それにその状況じゃ、ほっとけなかったのも理解出来るしね」
「本当にそうなの。私も子供の頃、この宮で親とはぐれたことがあったから、何んかほっとけなくて...」
「へぇ、俺なんて、子供の頃にここに連れてこられた時なんて、親にしばらくその辺で遊んで待っていろっていわれたぞ」
「まぁ、きっとそれは椋毘登が遊びに夢中になって、どこかに行くこともないと思ったのね」
どつやら同じ子供でも、稚沙と椋毘登ではだいぶ当時の行動が違っていたようだ。
「ここでは子供が親につられてくることもあるから、当然今回のように迷子になる子供も出てくる。そんな光景なら俺だって見たことあるよ」
「へぇ、椋毘登はそういう時どうしたの?」
「いちいち泣いて鬱陶しいから、迷子になるお前が悪いとかいって叱ったりしたかな」
「椋毘登、それはちょっと可哀想なんじゃない?」
「まぁ、昔の話だからな。今は流石にそんなこともしないさ。相手が誰の子供かも分からないからね」
(椋毘登って、昔から意地の悪い子供だったのかしら)
「まぁ、その話はもう良いだろう。お前のせいで時間が遅れてるし、早くここを出発しよう」
「あ、そうだった!早く行かないと!」
稚沙が椋毘登の腕を掴んで、あわてて向かおうとした。だがその矢先に急に彼に動きを止められてしまう。
(うん、椋毘登?)
椋毘登は足元においてあった袋を持ち上げ、中の物を取り出した。
彼女が不思議そうに見ると、それは何と一輪の橘の花だった。
それから彼はその花の茎を稚沙の頭に刺して、落ちないよう綺麗に固定してくれた。
「え、椋毘登、これって」
「ここにくる途中で見つけたんだ、何となく稚沙につけたら似合うような気がして......」
椋毘登は少し気恥ずかしそうにして、稚沙にそう答える。
「わぁ、とっても素敵ね、椋毘登ありがとう!!」
稚沙は彼のそんな気遣いにひどく感動を覚えた。先日の境部摩理勢の件で沈んでいた気持ちも、これで一気に吹き飛びそうな気がする。
それから稚沙と椋毘登は厩に向かい、彼の乗ってきた馬に跨ると、そのまま小墾田宮を出て、急いで目的地へと向かっていった。
すると椋毘登本人は壁に体を少し持たれさせて、人待ち顔をしながら、辺りの光景を眺めている様子だ。
まだ少し幼さの残る顔つきはしているものの、日頃から鍛えていることもあり、割と体つきはしっかりしている。
そして彼は今日外に出かけるためか、少し控えめな服装はしているものの、あいかわらず腰にはたいそう立派そうな刀を携えていた。
(結局は、また椋毘登を待たせてしまった...)
稚沙はそんな彼の様子を見るなり、一目散にそばに駆け寄っていく。
「椋毘登、遅くなってごめんなさい!」
それから彼女は自身が待ち合わせに遅れてしまった経緯を、必死になって説明した。
だがその話を聞いた椋毘登は、意外にもとくに怒る風でもなく、至って平然としている。
「なるほど、稚沙らしいな。まぁその子供の親が見つかって、本当何よりだよ」
「あれ、椋毘登それだけ?もっと怒るかと思っていたのに」
「別に、お前が待ち合わせに遅れるなんて、今回に限ったことじゃない。それにその状況じゃ、ほっとけなかったのも理解出来るしね」
「本当にそうなの。私も子供の頃、この宮で親とはぐれたことがあったから、何んかほっとけなくて...」
「へぇ、俺なんて、子供の頃にここに連れてこられた時なんて、親にしばらくその辺で遊んで待っていろっていわれたぞ」
「まぁ、きっとそれは椋毘登が遊びに夢中になって、どこかに行くこともないと思ったのね」
どつやら同じ子供でも、稚沙と椋毘登ではだいぶ当時の行動が違っていたようだ。
「ここでは子供が親につられてくることもあるから、当然今回のように迷子になる子供も出てくる。そんな光景なら俺だって見たことあるよ」
「へぇ、椋毘登はそういう時どうしたの?」
「いちいち泣いて鬱陶しいから、迷子になるお前が悪いとかいって叱ったりしたかな」
「椋毘登、それはちょっと可哀想なんじゃない?」
「まぁ、昔の話だからな。今は流石にそんなこともしないさ。相手が誰の子供かも分からないからね」
(椋毘登って、昔から意地の悪い子供だったのかしら)
「まぁ、その話はもう良いだろう。お前のせいで時間が遅れてるし、早くここを出発しよう」
「あ、そうだった!早く行かないと!」
稚沙が椋毘登の腕を掴んで、あわてて向かおうとした。だがその矢先に急に彼に動きを止められてしまう。
(うん、椋毘登?)
椋毘登は足元においてあった袋を持ち上げ、中の物を取り出した。
彼女が不思議そうに見ると、それは何と一輪の橘の花だった。
それから彼はその花の茎を稚沙の頭に刺して、落ちないよう綺麗に固定してくれた。
「え、椋毘登、これって」
「ここにくる途中で見つけたんだ、何となく稚沙につけたら似合うような気がして......」
椋毘登は少し気恥ずかしそうにして、稚沙にそう答える。
「わぁ、とっても素敵ね、椋毘登ありがとう!!」
稚沙は彼のそんな気遣いにひどく感動を覚えた。先日の境部摩理勢の件で沈んでいた気持ちも、これで一気に吹き飛びそうな気がする。
それから稚沙と椋毘登は厩に向かい、彼の乗ってきた馬に跨ると、そのまま小墾田宮を出て、急いで目的地へと向かっていった。