稚沙は仕事の休憩の間を使って、さっそく椋毘登を探してみることにした。
日頃彼が小墾田宮のどこに行っているかは大方把握できている。なので可能性のありそうな場所から探してみるのが良さそうだ。
(よし、まずは庁ね。椋毘登はその日蘇我からの伝言があれば、まずは庁に向かうはずだから)
彼女はそう思い立つと、さっそく庁へと向かうことにした。今は昼過ぎなのでそこまで混雑もしていない。椋毘登自身もそのことは知っているので、彼も庁にはいつも昼過ぎ以降に寄るようにしていた。
稚沙が実際に庁に行ってみると、彼女の予感は見事に的中した。彼は建物の外で宮の男性と立ち話をしている様子だ。割と打ち解けて話しをしているようなので、恐らく何かの雑談でもしているのだろう。
そして今は丁度、その話が終わろうとしていた。
(よし、椋毘登の後ろからまわって、いきなり声をかけちゃおう!)
それから彼女は少し遠回りをしながら、椋毘登の元にゆっくりと近づいていく。そして彼がいる壁の横の裏道にささっと入りこんだ。
一方、椋毘登の方は、話し相手の男性に軽く挨拶をし、その相手を見送った。彼も小墾田宮に通うようになって半年、だいぶここの宮人とも打ち解けてきているようだ。
(よし、いまだ!)
ふと椋毘登は急に後ろにいる人の気配を感じる。だが彼は特に何の動きもしようとはしない。
そして稚沙はいきなり後ろから椋毘登に手を伸ばし、彼に思いっきり抱きついた。
「椋毘登、会いたかった~!」
これはいうなれば、彼女なりの彼への愛情表現である。2人が知り合ってから半年程がたつが、相変わらずこんな馴れ合い状態を続けていた。
また少し前まで、中々思うように会えない日々が続いていた。そのため今は、椋毘登に会えるだけで、彼女は十分に幸せだった。
「稚沙、いい加減こういうのは止めろよな。誰かに見られたらどうするんだ」
どうやら椋毘登は、後ろにいたのが稚沙だと分かっていたようである。というより、これまでも何度も同じことをされてきているので、もう慣れっこなのだろう。
「だって、椋毘登を見つけたから何となく……でも全然驚かないのね」
「当たり前だ!お前のすることなんておおかた理解している。だいたい良くもまあ、こんなことが毎回平気で出来るよな。恥ずかしくないのか?」
稚沙からすれば、椋毘登と会えた嬉しさでやっていたことなので、特にそれほど恥ずかしいとは思っていなかった。
「だって、周りに人もいなかったし、それにこんな時じゃないと出来ないじゃない?」
それを聞いた椋毘登は、思わずため息をつく。どうも彼女はまだ男女の付き合い方を正しく理解出来ていない様子だ。
「あぁ、もう分かったから。とにかく、一旦離れろ!」
彼はそう話すと、自身から無理やり彼女を離す。そして少し距離を置いてから改めて彼女に目を向ける。
稚沙はせっかく自身から抱き付いたにも関わらず、彼に無理やり離されてしまい、少しシュンとしてしまう。彼がこんなふうに不愛想なのは、知り合った当初から全く変わっていない。
(せっかっく自分から抱き付いてみたのに……)
日頃彼が小墾田宮のどこに行っているかは大方把握できている。なので可能性のありそうな場所から探してみるのが良さそうだ。
(よし、まずは庁ね。椋毘登はその日蘇我からの伝言があれば、まずは庁に向かうはずだから)
彼女はそう思い立つと、さっそく庁へと向かうことにした。今は昼過ぎなのでそこまで混雑もしていない。椋毘登自身もそのことは知っているので、彼も庁にはいつも昼過ぎ以降に寄るようにしていた。
稚沙が実際に庁に行ってみると、彼女の予感は見事に的中した。彼は建物の外で宮の男性と立ち話をしている様子だ。割と打ち解けて話しをしているようなので、恐らく何かの雑談でもしているのだろう。
そして今は丁度、その話が終わろうとしていた。
(よし、椋毘登の後ろからまわって、いきなり声をかけちゃおう!)
それから彼女は少し遠回りをしながら、椋毘登の元にゆっくりと近づいていく。そして彼がいる壁の横の裏道にささっと入りこんだ。
一方、椋毘登の方は、話し相手の男性に軽く挨拶をし、その相手を見送った。彼も小墾田宮に通うようになって半年、だいぶここの宮人とも打ち解けてきているようだ。
(よし、いまだ!)
ふと椋毘登は急に後ろにいる人の気配を感じる。だが彼は特に何の動きもしようとはしない。
そして稚沙はいきなり後ろから椋毘登に手を伸ばし、彼に思いっきり抱きついた。
「椋毘登、会いたかった~!」
これはいうなれば、彼女なりの彼への愛情表現である。2人が知り合ってから半年程がたつが、相変わらずこんな馴れ合い状態を続けていた。
また少し前まで、中々思うように会えない日々が続いていた。そのため今は、椋毘登に会えるだけで、彼女は十分に幸せだった。
「稚沙、いい加減こういうのは止めろよな。誰かに見られたらどうするんだ」
どうやら椋毘登は、後ろにいたのが稚沙だと分かっていたようである。というより、これまでも何度も同じことをされてきているので、もう慣れっこなのだろう。
「だって、椋毘登を見つけたから何となく……でも全然驚かないのね」
「当たり前だ!お前のすることなんておおかた理解している。だいたい良くもまあ、こんなことが毎回平気で出来るよな。恥ずかしくないのか?」
稚沙からすれば、椋毘登と会えた嬉しさでやっていたことなので、特にそれほど恥ずかしいとは思っていなかった。
「だって、周りに人もいなかったし、それにこんな時じゃないと出来ないじゃない?」
それを聞いた椋毘登は、思わずため息をつく。どうも彼女はまだ男女の付き合い方を正しく理解出来ていない様子だ。
「あぁ、もう分かったから。とにかく、一旦離れろ!」
彼はそう話すと、自身から無理やり彼女を離す。そして少し距離を置いてから改めて彼女に目を向ける。
稚沙はせっかく自身から抱き付いたにも関わらず、彼に無理やり離されてしまい、少しシュンとしてしまう。彼がこんなふうに不愛想なのは、知り合った当初から全く変わっていない。
(せっかっく自分から抱き付いてみたのに……)