薬狩りから帰ってきて1週間ほどが経過していた。
稚沙の足の捻挫も何とか治り、いつも通り宮での仕事に励んでいた。そして今彼女は倉庫の整理をしている最中である。
「とりあえず、薬狩りも無事に終わって一安心ってところかな」
彼女はそういいながら、木簡を必要な物と不必要な物に仕分けしている。
木簡も捨てずにいると沢山たまってしまう為、必要なくなれば地面に埋めているのだ。
「とりあえず捨てる木簡は外に出してしまおう。その後は自分で捨てるか、他の人にお願いして捨ててもらうかしよう」
稚沙がそういって木簡を分けている時だった。倉庫の中に別の女官が2人入ってくる。どうやら倉庫に探し物を取りにきたようである。
相手は稚沙よりは何年か先輩の女官で、正直彼女もちょっと苦手意識のある女官だった。
(あぁ、やだな。早く倉庫から出て行って欲しい……)
だが彼女らは倉庫の中で急に雑談をはじめてしまったようだ。しかも今日の仕事で腹が立つことがあったようで、愚痴の話を始めてしまっている。
(うぁ~最悪だ)
だがしばらくして、彼女らは急に話題を変えてきた。今度はどうやら好みの異性の話のようである。
いくら宮に勤めているとはいえ、女官も伴侶を持つ者も多い。中にはより身分の高い人に見初めて貰う為に、宮で働いている女性も恐らくはいることだろう。
そして彼女らは宮中で度々見かけていた、ある青年の話を始めた。
「ところで、あの蘇我の彼も最近よく宮に来るようになったじゃない?」
「本当にそうよね、小祚殿の代理とはいえ、よくご立派に出仕されているわ」
(え、それって、もしかして椋毘登のこと?)
「椋毘登殿はまだ17歳だけど、本当に出来た方よね。この間来られた時に偶然声をかけてみたんだけど、とても礼儀正しかったわ」
「近頃宮の女官達が噂しているのが良く分かるわ」
とまぁ、そんな感じで。彼女達は椋毘登のことを少し興奮気味にして話している。
(確かに椋毘登なら、宮の女官に好かれてもおかしくはない……彼、人当たりだけは本当に良いから)
稚沙もそんなことはとっくに分かりきっていることなので、とりあえずそのまま聞き流すことにしようとした。
だがそれから思いもよらない話を彼女らから耳にする。
「でも噂だと、小墾田宮にどうも好意を寄せている女性がいるそうで、それで宮に来る頻度が多くなったって聞いたわ」
「まぁ、それは私も聞いたわ。一体誰なんでしょう。はぁー羨ましい話ね」
(へぇ?そんな噂が流れているの)
稚沙はそれを聞いて一気に血の気が引く思いがした。椋毘登には日頃から、くれぐれも自分達のことがバレないようにと、しつこくいわれている。
それで一応彼女なりには気を付けているのだが、それでも完璧に出来ているといえる自信はなかった。
稚沙の足の捻挫も何とか治り、いつも通り宮での仕事に励んでいた。そして今彼女は倉庫の整理をしている最中である。
「とりあえず、薬狩りも無事に終わって一安心ってところかな」
彼女はそういいながら、木簡を必要な物と不必要な物に仕分けしている。
木簡も捨てずにいると沢山たまってしまう為、必要なくなれば地面に埋めているのだ。
「とりあえず捨てる木簡は外に出してしまおう。その後は自分で捨てるか、他の人にお願いして捨ててもらうかしよう」
稚沙がそういって木簡を分けている時だった。倉庫の中に別の女官が2人入ってくる。どうやら倉庫に探し物を取りにきたようである。
相手は稚沙よりは何年か先輩の女官で、正直彼女もちょっと苦手意識のある女官だった。
(あぁ、やだな。早く倉庫から出て行って欲しい……)
だが彼女らは倉庫の中で急に雑談をはじめてしまったようだ。しかも今日の仕事で腹が立つことがあったようで、愚痴の話を始めてしまっている。
(うぁ~最悪だ)
だがしばらくして、彼女らは急に話題を変えてきた。今度はどうやら好みの異性の話のようである。
いくら宮に勤めているとはいえ、女官も伴侶を持つ者も多い。中にはより身分の高い人に見初めて貰う為に、宮で働いている女性も恐らくはいることだろう。
そして彼女らは宮中で度々見かけていた、ある青年の話を始めた。
「ところで、あの蘇我の彼も最近よく宮に来るようになったじゃない?」
「本当にそうよね、小祚殿の代理とはいえ、よくご立派に出仕されているわ」
(え、それって、もしかして椋毘登のこと?)
「椋毘登殿はまだ17歳だけど、本当に出来た方よね。この間来られた時に偶然声をかけてみたんだけど、とても礼儀正しかったわ」
「近頃宮の女官達が噂しているのが良く分かるわ」
とまぁ、そんな感じで。彼女達は椋毘登のことを少し興奮気味にして話している。
(確かに椋毘登なら、宮の女官に好かれてもおかしくはない……彼、人当たりだけは本当に良いから)
稚沙もそんなことはとっくに分かりきっていることなので、とりあえずそのまま聞き流すことにしようとした。
だがそれから思いもよらない話を彼女らから耳にする。
「でも噂だと、小墾田宮にどうも好意を寄せている女性がいるそうで、それで宮に来る頻度が多くなったって聞いたわ」
「まぁ、それは私も聞いたわ。一体誰なんでしょう。はぁー羨ましい話ね」
(へぇ?そんな噂が流れているの)
稚沙はそれを聞いて一気に血の気が引く思いがした。椋毘登には日頃から、くれぐれも自分達のことがバレないようにと、しつこくいわれている。
それで一応彼女なりには気を付けているのだが、それでも完璧に出来ているといえる自信はなかった。