一方の稚沙も、他の女官達と一緒になって薬草探しに精を出していた。
だが彼女の方は、思わぬ事態に陥ってしまう。
薬草狩りにあまりに夢中になりすぎて、足元をしっかり見ていなかった為に、うっかり転んで足を挫いてしまったのだ。
(ど、どうしよう……)
他の宮人達も、彼女に呆れはしたものの、痛そうにしている彼女を見て、少し心配そうに眺めている。
「ちょっと、稚沙あなた大丈夫なの?誰かに助けを呼んだ方が、良さそうね」
「そ、そんなご迷惑掛ける訳には……」
意気揚々と薬狩りをしていた彼女にとっては、とても気恥ずかしく、申し訳ない思いでいっぱいだ。
周りの人達がどうしたものかと悩んでいたちょうどその時である。
大勢の人達の足音が、こちらに向かって移動してきているのが聞こえる。
どうやら狩りに向かっていた男性達が、丁度山を降りてきたようである。
そしてその中には、厩戸皇子達の一行もいた。
「おい、何かあったのか?」
厩戸皇子は何人かの群がっている女性達の元に駆け寄ってくる。
そして地べたに座っている稚沙を見いて、思わず声をかけた。
「稚沙、どうしたんだ?歩けないのか」
稚沙も、厩戸皇子の目の前でこんな情けない自分を見られるのはとても恥ずかしく、身の置きどころがない。
「いえ、ちょっと足を挫いてしまいまして、多分少し待てば歩けるはずです」
彼女的には、何とかこの場をやり過ごそうと考えてるようだが、どう見ても本人が立って自力で歩けるとは到底思えない。
(もう、どうしてこんなるのよ!)
そんな風に彼女が考えていた時である。
急にまた別の人の声がした。それは彼女が良く知っている青年の声のようだ。
「おい、稚沙、意地をはるんじゃない。皆が困ってるだろう!」
その声の主は、厩戸皇子についていた椋毘登だった。
(く、椋毘登)
彼は稚沙の元にやってくるなり、しゃがみ込んで、彼女の足を観察してくる。
彼女の足は少し腫れてきており、ちょっと触るだけでも、結構痛そうに思える。
「仕方ない、私と従者とで交代で運ばせるか......」
「本当にお前は仕方ないなー」
椋毘登が突然厩戸皇子の言葉を遮って、稚沙に自分の背を向けてくる。
「俺の背中に乗れ、帰りまで送っていってやるから」
「な、何をいってるのよ、椋毘登!私は別に大丈夫だから」
「いいから、大人しく乗れって!!皆行ってしまうぞ!」
さすがの稚沙も、椋毘登にそんな風にいわれてしまうとよう逆らえなくなり、渋々椋毘登に背負わされた。
すると椋毘登「よいしょ!っと」といってそのまま立ち上がり、その場からすたすたと歩き始めた。
(椋毘登ってば、人を背負ってるのに何か全然余裕に見える)
稚沙は改めて、彼が日頃から体を鍛えていることを痛感させられた。
そんな2人の後ろ姿を、厩戸皇子も少し不思議そうに見てはいたが、直ぐに気持ちを切り替え、他の者達と山を下っていくことにした。
だが彼女の方は、思わぬ事態に陥ってしまう。
薬草狩りにあまりに夢中になりすぎて、足元をしっかり見ていなかった為に、うっかり転んで足を挫いてしまったのだ。
(ど、どうしよう……)
他の宮人達も、彼女に呆れはしたものの、痛そうにしている彼女を見て、少し心配そうに眺めている。
「ちょっと、稚沙あなた大丈夫なの?誰かに助けを呼んだ方が、良さそうね」
「そ、そんなご迷惑掛ける訳には……」
意気揚々と薬狩りをしていた彼女にとっては、とても気恥ずかしく、申し訳ない思いでいっぱいだ。
周りの人達がどうしたものかと悩んでいたちょうどその時である。
大勢の人達の足音が、こちらに向かって移動してきているのが聞こえる。
どうやら狩りに向かっていた男性達が、丁度山を降りてきたようである。
そしてその中には、厩戸皇子達の一行もいた。
「おい、何かあったのか?」
厩戸皇子は何人かの群がっている女性達の元に駆け寄ってくる。
そして地べたに座っている稚沙を見いて、思わず声をかけた。
「稚沙、どうしたんだ?歩けないのか」
稚沙も、厩戸皇子の目の前でこんな情けない自分を見られるのはとても恥ずかしく、身の置きどころがない。
「いえ、ちょっと足を挫いてしまいまして、多分少し待てば歩けるはずです」
彼女的には、何とかこの場をやり過ごそうと考えてるようだが、どう見ても本人が立って自力で歩けるとは到底思えない。
(もう、どうしてこんなるのよ!)
そんな風に彼女が考えていた時である。
急にまた別の人の声がした。それは彼女が良く知っている青年の声のようだ。
「おい、稚沙、意地をはるんじゃない。皆が困ってるだろう!」
その声の主は、厩戸皇子についていた椋毘登だった。
(く、椋毘登)
彼は稚沙の元にやってくるなり、しゃがみ込んで、彼女の足を観察してくる。
彼女の足は少し腫れてきており、ちょっと触るだけでも、結構痛そうに思える。
「仕方ない、私と従者とで交代で運ばせるか......」
「本当にお前は仕方ないなー」
椋毘登が突然厩戸皇子の言葉を遮って、稚沙に自分の背を向けてくる。
「俺の背中に乗れ、帰りまで送っていってやるから」
「な、何をいってるのよ、椋毘登!私は別に大丈夫だから」
「いいから、大人しく乗れって!!皆行ってしまうぞ!」
さすがの稚沙も、椋毘登にそんな風にいわれてしまうとよう逆らえなくなり、渋々椋毘登に背負わされた。
すると椋毘登「よいしょ!っと」といってそのまま立ち上がり、その場からすたすたと歩き始めた。
(椋毘登ってば、人を背負ってるのに何か全然余裕に見える)
稚沙は改めて、彼が日頃から体を鍛えていることを痛感させられた。
そんな2人の後ろ姿を、厩戸皇子も少し不思議そうに見てはいたが、直ぐに気持ちを切り替え、他の者達と山を下っていくことにした。