そこで椋毘登はもう一呼吸してから、再び鹿に狙いを定めてから、矢を静かに引いた。
すると矢は鹿めがけて真っ直ぐ飛んでいき、今度は無事に命中させることができた。
「椋毘登、よくやったな!」厩戸皇子はそういって、思わず椋毘登の背中をたたく。
「えぇ、何とか仕留めることが出来ました」
それから2人は鹿の側まで行き、その鹿が息絶えたのを確認した後、従者を連れてこさせ、紐で結ばさせた。
その後も彼らは狩りを続けていたが、しばらくして厩戸皇子が、一旦その場で休憩をとることを指示してくる。
椋毘登は近くの木の下に座り込む。だが急に睡魔に襲われてしまい、彼はうっかりうたた寝に始めてしまった。
そんな彼の様子を見た厩戸皇子も「まぁ、椋毘登も疲れているのだろう……今は側に従者達もいるから、一旦彼はこのままにしておこう」
こうして厩戸皇子は、椋毘登を起こさずそのまま休ませることにした。
そして椋毘登は夢を見始めていた。
彼の前には一人の青年が立っている。それは椋毘登がこれまで何度も夢の中で見ている人物のようだが、今回初めてはっきりとその者の姿が見えていた。
相手はやはり少し古い時代の人間のようで、腰にさしているのも、恐らくは鉄剣だろう。
「お前は一旦何者だ」
だが相手からは何の反応はなく、ただただ椋毘登の様子を伺っている感じだ。
そして心なしか相手は少し愉快そうな素振りをしている風にも見えた。
(ここはおれの夢の中だ……よし、ここは一度試してみるか)
すると椋毘登はとっさに自身の刀を抜くと、いきなりその相手の青年に切り掛かりにいった。
すると相手の青年も、直ぐさま自身の剣を取り出して、間一髪椋毘登の刀を受け止めた。
(何、こいつ強い!)
「ふぅー、何もいきなり切り掛かることはないだろう?」
一方の椋毘登もこれではらちが開かないからと、一旦後ろに身を引いた。そして続けて相手に激をとばす。
「お前は、一体誰なんだ!」
「誰といわれても、とりあえずお互いの剣をしまおうか」
相手の青年は少しやれやれといった様子を見せる。
椋毘登もそういわれたので、仕方なく相手に合わせて、しぶしぶ刀を鞘に収めることにした。
相手の青年も鞘に剣を収めたのちに、椋毘登に対して話を始めた。
「俺はそうだな。君の生きている時代よりも150年程前の人間ってところかな。ちなみに大和の皇子でもあるんだけどね」
彼はそういってニコニコしている。この大和の皇子らしき人物は、思いの他人懐っこい性格のようだ。
「はぁ!?150年前の人間で、しかも大和の皇子だと!」
椋毘登はかなりの衝撃を受け、その場で大声を出して叫んだ。
「そ、もちろん。肉体はもうないけどね」
つまり彼の体は今は存在しておらず、いわば霊体的な存在なのだろうか。
「それは大変失礼しました。まさか過去の時代の皇子とはつゆ知らず......だが150年前ともなると、おそらく俺はのあなたのことは知らないと思います」
椋毘登のいる時代よりも前となると、恐らく記録もしっかりとは残されてはおらず、人から人へのいい伝えだけが頼りとされていた。
すると矢は鹿めがけて真っ直ぐ飛んでいき、今度は無事に命中させることができた。
「椋毘登、よくやったな!」厩戸皇子はそういって、思わず椋毘登の背中をたたく。
「えぇ、何とか仕留めることが出来ました」
それから2人は鹿の側まで行き、その鹿が息絶えたのを確認した後、従者を連れてこさせ、紐で結ばさせた。
その後も彼らは狩りを続けていたが、しばらくして厩戸皇子が、一旦その場で休憩をとることを指示してくる。
椋毘登は近くの木の下に座り込む。だが急に睡魔に襲われてしまい、彼はうっかりうたた寝に始めてしまった。
そんな彼の様子を見た厩戸皇子も「まぁ、椋毘登も疲れているのだろう……今は側に従者達もいるから、一旦彼はこのままにしておこう」
こうして厩戸皇子は、椋毘登を起こさずそのまま休ませることにした。
そして椋毘登は夢を見始めていた。
彼の前には一人の青年が立っている。それは椋毘登がこれまで何度も夢の中で見ている人物のようだが、今回初めてはっきりとその者の姿が見えていた。
相手はやはり少し古い時代の人間のようで、腰にさしているのも、恐らくは鉄剣だろう。
「お前は一旦何者だ」
だが相手からは何の反応はなく、ただただ椋毘登の様子を伺っている感じだ。
そして心なしか相手は少し愉快そうな素振りをしている風にも見えた。
(ここはおれの夢の中だ……よし、ここは一度試してみるか)
すると椋毘登はとっさに自身の刀を抜くと、いきなりその相手の青年に切り掛かりにいった。
すると相手の青年も、直ぐさま自身の剣を取り出して、間一髪椋毘登の刀を受け止めた。
(何、こいつ強い!)
「ふぅー、何もいきなり切り掛かることはないだろう?」
一方の椋毘登もこれではらちが開かないからと、一旦後ろに身を引いた。そして続けて相手に激をとばす。
「お前は、一体誰なんだ!」
「誰といわれても、とりあえずお互いの剣をしまおうか」
相手の青年は少しやれやれといった様子を見せる。
椋毘登もそういわれたので、仕方なく相手に合わせて、しぶしぶ刀を鞘に収めることにした。
相手の青年も鞘に剣を収めたのちに、椋毘登に対して話を始めた。
「俺はそうだな。君の生きている時代よりも150年程前の人間ってところかな。ちなみに大和の皇子でもあるんだけどね」
彼はそういってニコニコしている。この大和の皇子らしき人物は、思いの他人懐っこい性格のようだ。
「はぁ!?150年前の人間で、しかも大和の皇子だと!」
椋毘登はかなりの衝撃を受け、その場で大声を出して叫んだ。
「そ、もちろん。肉体はもうないけどね」
つまり彼の体は今は存在しておらず、いわば霊体的な存在なのだろうか。
「それは大変失礼しました。まさか過去の時代の皇子とはつゆ知らず......だが150年前ともなると、おそらく俺はのあなたのことは知らないと思います」
椋毘登のいる時代よりも前となると、恐らく記録もしっかりとは残されてはおらず、人から人へのいい伝えだけが頼りとされていた。