野倉先生は、俺にもなんか取ってよ。

なんて、北川先生に言ってたけど金欠だから来年ね。なんて、話している。


なんて、愛おしいんだろう。

金欠なのに…っというか、ただ取るのが面倒臭いだけだろうけど。

私だけに、取ってくれた。

それだけで、嬉しい。

それだけで、空でも飛べちゃいそうになる。

今日まで溜め込んでた苦しさが一瞬で吹き飛ぶ。


でも、その空気は一瞬で冷たくなった。

「先生…悪いんですけど俺らこういう感じなんで。」

急に悠稀君に手を捕まれて、まるで私たち
付き合ってますみたいに、先生達に見せつけていた。

私は、焦って振りほどこうとしたけど男の子の力には勝てっこない。

「ちょっ、ちが…これは」

私が誤解を解く前に先生は、「あー、そっか、邪魔してごめんね」と、野倉先生とどこかに行ってしまった。


「ちょっと…!なんであんなことするの!?」


茉奈ちゃんも眉間の皺を寄せてこっちを見ながら、悠稀君に怒っている様子だった。

「なんでって…好きだから。」

「…っ!ああいう事されると困るよ。」

「…先生のこと、好きじゃないんでしょ?前、そう言ってたよね…紬。」


「…っ!!それは…」


「…告白の返事、今聞かせて?」


悠稀君の顔を見ると、少し辛そうに笑っている顔。


花火の後に言うつもりだったけど、悠稀君からこの時間を作ってくれたのだから、ここで言う。

「私は…先生の事が…好き…。悠稀君の事も好きだけど、先生の好きのは…違うの。」

やっと言えた。

「分かった。でも、諦める気はないよ?」

「へ…?いや、今丁重に断ったよね?」


「断られたから諦めるなんて、俺そんな薄っぺらい恋、紬にしてないし…。」

自分の顔が赤くなる。

悠稀君がなんだか、いつもと違うから。

「ばっ、、ばかっ!!もう!行くよ!」

私は、恥ずかしくて1人でスタスタと歩いた。

後ろから、茉奈ちゃんが「待ってー」って、言ってる声がしたけど、止まる余裕もないくらい体が熱かった。

あまりにも熱くて水買ってくると2人に言おうとして、後ろを振り向いたけど知らない人ばかりになっていた。

「…え?茉奈ちゃん?悠稀君?」

いつの間にか、私は迷子になっていた。

えっ…うそ…。

フラッ

どうしよう。あれ?なんか、私今倒れそう。

足元がヨロヨロする。

「あれ、お姉ちゃん今1人?俺らとお祭りまわろーよ。」

だ…れ?知らない男の人達がどんどんこっちに来る。

急に腕を掴まれて、一気に鳥肌がたつ。

ちょっと…誰か…助けて…。

「お待たせ、紬。はいこれ。」

俯いてた顔を上にあげると、北川先生が私に
ジュースを差し出していた。

「紬、早く行こ。花火始まるよ?」


紬…なんで、名前呼び?

知らない男の人達の、手を振りはらって次は、先生が私の手を握る。

先生が手を握っても鳥肌…たたないんだ。