しまった!
 思わずオタクだったときのクセで、ブランに様をつけてしまった……!

「エレーナ様は、出会ったばかりの殿方に心を射抜かれてしまったのですね。王太子様という婚約者がいらっしゃるのに」

 言葉尻は優しいのに、マリーの言い方は棘のように鋭い。

「違うっ! 私は何年も何年も前からブラン様を推して…………あ」

 マリーにキョトンとつぶらな瞳を向けられ、言葉に詰まった。
 なんだかとても、いけないことを言った気がする……。

「推し……」

 マリーが呟いた。それから、眉間に皺を寄せた。

「ねえ、もしかして、あなたも転生者……?」