「はぁ、緊張した……」

 ベッドの上で脱力した。大の字になると、頭上からクスクスと笑い声が聞こえる。
 ハッとしてガバッと起き上がった。

 ヤバっ! マリーが居るんだった!

「ごめんなさい、……つい」

「いえ。王太子様のご婚約者様ですもの、他の男性に触れられたら緊張もしますよね」

 その悪意を込められた言い方に、はっとする。

 もしかして、マリーは既にレオンの事が……?

「ところでエレーナ様、身体の具合はもうよろしいのですか?」

 聞かれ、遮るように口を開いた。

「ねえマリー……あなた、私に協力してくれない?」

「あまりお話したこともないのに、エレーナ様はおかしなことをおっしゃるのですね……!」

 協力だなんて、おかしかったか。
 でも、前世での推しが目の前にいると知った以上、できることなら彼と結ばれたい!

 私は悪役令嬢。
 マリーを懲らしめて、追放されて、没落貴族になる……。
 どうせ、マリーとレオンが一緒になるなら、私も彼女もハッピーになる道を選んだほうがいいじゃない!

「どういった内容ですの?」

 意外にも、マリーは内容を気にしていた。
 彼女が乗り気なら、持ちかけるしかない!

「レオンはあなたに譲る。代わりに、私とブラン様が結ばれるように、アシストしてもらいたいの!」

「ブラン…………様?」