「エレーナも書くだろう、マリーへの手紙」

「ええ、もちろん」

 マリーに伝えたいことが、山ほどある。
 今日、私たちはマリーの継母が働いていた悪事を暴き、彼女を捕らえることにやっと成功したのだ。

 正規ルートでは、その悪事に私が手を染め、マリーを陥れるのだが、マリーと私は友人なってしまった。
 すると今度は、マリーが継母の悪事に使われるのではないかと懸念し、レオンはこの問題に手が出せずにいたのだ。

 しかし、卒業と同時にマリーがリベルテ王国へ渡り、ヴィルコーン王国からいなくなったことで、事態を良い方向に動かすことができた。
 マリーの継母は、今は牢に入れられ、毎日騎士たちからの取り調べを受けているという。

 さらに、このことはレオン王太子の結婚後の初の手柄として、国中に周知された。

 私とマリー、互いの恋路は入れ替わってしまった。
 けれど、今は互いに幸せな道を歩いている。

 手紙を書き終え、蝋を落として封をすると、待ちかねていたようにレオンが私をベッドへと誘う。
 手を握られ、ベッドの縁にレオンと並んで腰掛けた。

「ふふっ」

 幸せで胸が満たされて、思わず笑みが漏れる。

「何を笑っているのかな?」

 レオンが私に顔を寄せる。
 おでこ同士がコツンとぶつかって、一番近い距離で微笑みあう。

「幸せだなあって」

「それは私もだよ」

 どちらからともなく、唇を寄せ合う。

「愛しているよ、エレーナ」

 キスの合間に囁くように告げられ、胸がいっぱいになる。

「私も……」

 「愛してる」の言葉は、レオンの深いキスに飲み込まれていく。
 私たちはそのまま、甘く蕩けるような幸せな夜を過ごしたのだった。


〈完〉