「確か、彼女は転入してきだんだよな。何か家に問題が――」

 レオンが言いかけて、私はひらめいた。

「マリーは、いじわるな継母にずっと過酷な労働を強いられて生きてきたようなのです。それはとてもとても、耐えられるものではなかったそうです。この学園に入学するのも継母に止められていたようなのですが、通達に応じない学校側が不審に思ってこの学園に連れてきて救ったとか」

 彼女の生い立ちを、レオンに説明する。
 そうすれば、きっとマリーは……!

「もし、マリーを卒業後、継母の元に返したら、また過酷な労働を強いられる日々が繰り返されると思うのです。そうなる前に、リベルテ城に雇ってもらえるなら――」

 言いかけて、マリーの方を向いた。
 ここから先は、私の意思では決められない。

 そもそも、マリーの推しはレオンで、彼女はレオンと結ばれることを望んでいたのだ。

 けれど、マリーは目をハートにしたままにっこりと笑って、ガブリエル王子と握手を交わしていた。

「是非に! こんな私でよろしければ、リベルテ王国のお城で雇ってくださいませ!」

「ってことで、レオンくん、マリーちゃんを卒業後、ここにまた迎えに来るからね」

 相変わらずヘラヘラしながら、ガブリエル王子がこちらに伝える。
 ブランは隣で頭を抱えていた。

「これで、万事解決かな?」

 レオンがそう耳元で囁いて、こっそりと私の唇に口吻を落とした。