マリーの方を振り向いて、思わずあんぐりと口を開けてしまった。

「マリー……?」

 てっきり、マリーには後ろめたい気持ちを、あるいは嫉妬の視線を向けられているものだと思っていた。

 けれど、マリーは全くこちらを見ていなかった。
 それどころか――

「ブラン、様……」

 彼女の視線は、ブランに向けられていたのだ。それも、色めきだっている。

 ブランも彼女の視線に気付き、ガブリエル王子に視線で助けを求めていた。

「強くて、一途で、無骨な殿方。それでいて、不器用で、守りたくなってしまう――」

 その顔はまるで、恋する乙女だ。

 そういえば、マリーと救護室で話すうちに、ついクセでブランのことをたくさん布教したような気がする……。

「エレーナ、彼女は一体……?」

「さ、さぁ?」

 レオンも驚いたらしい。耳元で聞かれ、動揺しながらも答えた。

「彼女にも春の季節かな」

 レオンはフフッと優しく微笑む。

「ブラン様!」

 突然、マリーが声を上げた。

「私、あなた様に一生ついていきます!」

「あのなあ、お嬢ちゃん、俺は――」

 ブランは困って、後ろ髪をガシガシと搔いている。
 けれど、ガブリエル王子がニヤニヤしながら口を挟んだ。

「いいじゃん、面白そうだし! ねえ、この子リベルテ城のメイドとして雇っていい?」