「でも、どうしてこんなことを――?」

 混乱した頭では、まだ状況をうまく理解できない。
 戸惑いの視線をレオンに向ければ、彼はふふっと笑って事の成り行きを教えてくれた。

「ガブリエル王子が教えてくれたんだ。エレーナに、前世の記憶があるらしいってこと」

 え、バレてたの!?

 ブランを推していたことがバレてしまったのかと、いたたまれない気持ちになる。
 キョロキョロと視線を彷徨わせていると、レオンが無理やり視界に入ってくる。その笑顔の圧に息を飲む。

 しかし、レオンの口から語られたのは、思っていたのとは少し違っていた。

「君はブラン殿の元恋人の記憶がある。そうだろう? しかも、その記憶はブラン殿を目の当たりにして、復活した」

 本当のこととは少し違うが、私は黙ってコクリと頷いた。
 ブランを目の当たりにして、前世の記憶が戻ったのは事実だ。

「ガブリエル王子が来てから、エレーナは様子がおかしかったからね。でも――」

 レオンはちらりと視線をブランに向けた。
 ブランはその視線に答えるようにコクリと小さく頷いた。