「エレーナ様……?」

 隣にいたマリーがこちらを向いて、呟いた。
 けれども私は構わずに、レオンに向かって叫び続けた。

「レオン様! レオン様が負けたら、私はリベルテ王国へ行かねばなりません! そんなの、嫌だから、だから――」

 目頭が熱くなって、涙が溢れた。
 喉の奥までじんじん熱くなって、言葉に詰まった。

 けれど、本心だった。
 例え結ばれないと分かっていても、私はレオンと一緒にいたいんだ。

『叶わない恋なんて、するもんじゃない』

 ブランに言われた言葉を思い出す。

 そんなことは分かっている。
 でも、恋は落ちてしまうもの。
 恋してしまったんだから、仕方ない。

「例え前世でブランさんが好きだって、それは前世の話です! だって、私が好きなのは――」

 レオンが好き。
 幼い頃から、ずっと一緒にいた戦友。
 いつでも私を助けてくれた、優しい人。
 いつでも側にいてくれた、いつでも私を大切にしてくれた、大切な婚約者。

 誰よりも、愛しい人。

 ブランは好きだ。
 でも、その好きとは違う。

 私は、本当に――

「レオン様が、大好きなんですーっ!」

 胸の奥がギュウっと痛む。けれど、喉の奥が痛くなるくらいに、私は叫んだ。
 レオンに、どうしても届けたかった。