その晩、ガブリエルはエレーナの元を訪れた。
 レオンに言ったら必ず止められるし、それでも強行したら自分も一緒に行くと言って聞かないだろうから彼には内緒だ。

 寮の入口でマリーという名の女生徒にエレーナの部屋の場所を聞き、その戸をノックする。

 戸を開いたエレーナは驚き目を見開いた。その目は赤く腫れぼったい。
 エレーナはすぐに、慌てたように目元を袖口でそっと押さえた。

「隠さなくてもいいよ、婚約者ちゃん」

 そっと袖の間から、エレーナがガブリエルを見上げた。

「ブランから聞いた」

 そう告げると、エレーナははっと視線をそらしながらも、ガブリエルを自室に招き入れた。