「高校卒業したら、タイミング見て海外に行くつもりだから。」

「料理の修行…?」

羽生は(うなず)いた。

「多分一人で行くし、何年行くかわかんないから。そういうのって、結婚してなくても待てるのかなって。」
「わかんない…」
「だろ?」
「てゆーか、まだ付き合ってないから、そんなに先のこと自体がわかんないけど…」
「………」

「なんか今、その時まで一緒にいたいなって思ったし…羽生くんと結婚、したいなって思っちゃった。」

葉月はニコッと笑った。

「だってこんな風に先のこと考えてる人なんて羽生くんくらいだって思うし、羽生くんらしいって思うし、それだけ長く一緒にいてもいいって思ってくれてるってことでしょ?」

羽生はまた(うなず)いた。
「次に付き合う子と結婚したいっていうか…結婚したいって思える相手と付き合いたい。」


「羽生くんと付き合いたい。」
「………」
「結婚…も、私でいいのかよくわかんないけど…付き合ってて結婚してもいいって羽生くんが思ってくれるなら…いつかしたい。」
「荻田と結婚するよ。そんな気がする。」
そう言って、羽生は葉月を抱きしめた。

(わ…)

「荻田、髪がちょっと冷たい…」
「こういうとこのドライヤーってちゃんと乾かなくて…」

羽生は葉月の髪を()くように指を絡めると、さらに強く抱きしめた。
葉月の鼓動は早くなる一方だ。